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「もう遅い時間だ。今日は泊まっていけ」
会話が弾み、気が付けば星空が広がっている。父の好意に甘え、早苗と星華の可愛らしい寝顔を見ていた。
眠れない僕は、庭に出て夜風を浴びる。ハナミズキは星の輝きを纏い、光の華を咲かせていた。その姿は、新たな家族を迎え入れてくれる様にも感じる。
「眠れないのか?」
「父さん」
「書斎から、こんな物が出てきた。受け取れ」
渡されたのは、母の手紙に使われていた封筒と便箋の残りだった。母に頼まれて買ったのだろう。可愛らしいデザインが父には似合わないと感じ、購入する姿を想像して笑いが込み上げる。
「何がおかしいんだ?」
「何でもないよ。ねえ、父さん。書斎を借りてもいいかな?」
「好きに使え」
窓から差し込む月明りを頼りに、僕は手紙を書き始めた。
『産まれて来てくれて、ありがとう。星華は僕の宝物だよ。これからは一緒に、いっぱい笑おうね。楽しい事がたくさん待って……』
【完】
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