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「父さん、早苗と結婚します」
「そうか。雅人、早苗ちゃんを幸せにするんだぞ。それと、早苗ちゃん……ありがとう。君がいてくれたから、私たちは真っ直ぐに生きる事が出来た」
「お義父さん……」
幼い頃から雅人を支えてくれた早苗ちゃんは、本当の娘だと思っている。どれだけ助けられただろう。どれだけ愛情を与えてくれただろう。二人が結ばれる事を夢見ていた私にとって、これほど嬉しい事は無い。
その日の夜。
結婚記念日に買ったペアのぐい呑みを用意し、雅人が買ってくれた日本酒を持って縁側に座った。
月明りに照らされたハナミズキを眺め、二十年ぶりの酒を流し込む。
「ありがとう……いつも見守ってくれていたな。お前が居てくれたから、雅人は立派に成長できた。さあ、一緒に飲もう……」
花柄のぐい飲みをそっと重ね、優しく輝く妻の幻影と酒を交わした。
祝い酒が体の隅々まで浸透していく。
顔を真っ赤にして笑う私に、月と星の光が毛布となって降り注いだ。
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