月の鏡

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私は、一人だった。 父の顔も、母の顔も知らない。 ただ、雨に濡れて泣いていたことは覚えている。 今日は満月。 この町には、こんな言い伝えがある。 満月、月が真上にあがるときに、誰か自分に関係する人に会える、という言い伝えが。 くだらないと思う。 私は肉親、顔を知らないのに。 「月に願います」 それでも、私は知りたいと思う。 「私の肉親に、」 今日は満月。 「会わせてください」 夜は、月に照らされていた。
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