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歌が終わると、ゆっくりとした手で晴敏が拍手する。
「やめろよ、こんな歌に」
「いや、よかったよ。聴けてよかった」
「世辞にも聞こえねーよ」
「いや、よかった。感情が篭っていたよ。なんつーか、悲しい歌だけどな」
それを聞いて裕翔はすこし俯く。
「……最近明るい歌が作れなくなってな。こんな悲しい辛い歌ばかりが頭の中に浮かんでくるんだよ」
「……そっか。やっと素直になれたんだな」
「え?」
そういっ言った晴敏の顔を、裕翔は見上げる。
その晴敏の顔は、柔らかく笑っていた。
「¨あのこと¨があってから、ユウは辛い顔を表に出さなくなった。それが俺は心配だったんだよ」
「……そう、か。俺はいつの間に」
この二人は、誰にも測れない友情が、お互いの間に浮遊している。
時に風に流れ、時に穏やかに浮かぶそれは、二人を『友情』という縁でつないでいた。
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