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都会に電車ですぐに行けるような、田舎とも都会とも言い難い街の低い山の上に、一つの高校があった。
偏差値も平均より少し上くらいか、校風も普通な学校。
「肩にくるわほんと……」
そこには心底しんどそうに、自転車のキリキリした音と共に校舎に入る1人の高校生、地山 裕翔(ちやま ゆうと)がいた。
背中にはギターケースが背負われている。
しかし、エレキギターを入れるにしては太い。
彼の背中には、古いアコースティックギターが背負われていた。
「なんでこんな山の上に学校作ったんだよ……重くてしょーがねぇ」
山の上に佇む高校へ通学するに、ギターを背負って毎日登校はなかなかの苦行だ。
ましてや運動部でもない裕翔ならばなおさらである。
「おーっす裕翔。毎朝大変そーだねぇ」
そう軽々しく話しかけてきたのは、朝のジョギング中の陸上部の矢代 夏恵美(やしろ かえみ)。
裕翔とは中学の頃からの仲であり、運動バカだ。
陸上では県大会入賞など、いろいろ功績を残しており、軽い様相とは裏腹にストイックな1面もある少女である。
「今日も走ってんのか、ほんと運動バカだなお前」
「音楽バカの裕翔には言われたくないねぇ。今日も新曲つくり?」
「ん、まぁな。全く進歩なしだが」
「そっかぁ。ま、完成したら聴かせてねん」
そう言ってまた走り出す夏恵美。
一体校舎何周してんだこいつ……と思いながら生徒玄関に入る裕翔。
この時間だと少し学校が始まる時間までには早く、周りにも朝が早い運動部ぐらいが清掃だの筋トレだのしているくらいだ。
裕翔の毎日は、早めに登校して早めに机に寝ること、である。
それが彼の学校ライフだった。
その予定を身体が覚えたかのように遂行すべく、手際よく靴を脱ぎ生徒用下駄箱から抜ける。
さて、と階段を登ろうとした瞬間。
裕翔の右側を、華奢な少女が1人通り過ぎようとした。
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