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その瞬間。
「「あ……」」
その瞬間、その少女は裕翔を通り過ぎることができず、廊下を走ったのか、その遠心力でそのまま裕翔に衝突してしまう。
「あたっ」
2人はその衝撃で尻餅をついてしまった。
「いてて……あ、おい。大丈夫か?」
「……」
その突撃をかました少女に裕翔は話しかけたが、彼女は俯いたままだ。
「えっと」
「……ご……めん……なさい」
と、それだけ言って彼女は起き上がり、階段を再び登り、姿を消してしまった。
そこに裕翔は呆然と残される。
「な、なんだあの娘……」
裕翔はなぜか身体が動かなかった。
しかしそれは、衝突した衝撃の所為では無い。
「……すげぇ綺麗な声だ」
その衝突した彼女の声は、裕翔の心を一瞬にして掴んでしまったのである。
たった一言で、耳をすませなければ聞こえないような小さな声ではあったのだが、その声は彼の心を掴んだ。
まるで山の透明な水を、より鮮明に、透明にしたような、透き通る声だった。
「上履き見た感じ1年生、か。んー、見ない顔だったな」
この高校は上履きの色で学年が分かる。
ぼーっと、そう呟きながら起き上がり、裕翔は再び階段を上がり教室に向かった。
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