第一章 聲と出会い

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その瞬間。 「「あ……」」 その瞬間、その少女は裕翔を通り過ぎることができず、廊下を走ったのか、その遠心力でそのまま裕翔に衝突してしまう。 「あたっ」 2人はその衝撃で尻餅をついてしまった。 「いてて……あ、おい。大丈夫か?」 「……」 その突撃をかました少女に裕翔は話しかけたが、彼女は俯いたままだ。 「えっと」 「……ご……めん……なさい」 と、それだけ言って彼女は起き上がり、階段を再び登り、姿を消してしまった。 そこに裕翔は呆然と残される。 「な、なんだあの娘……」 裕翔はなぜか身体が動かなかった。 しかしそれは、衝突した衝撃の所為では無い。 「……すげぇ綺麗な声だ」 その衝突した彼女の声は、裕翔の心を一瞬にして掴んでしまったのである。 たった一言で、耳をすませなければ聞こえないような小さな声ではあったのだが、その声は彼の心を掴んだ。 まるで山の透明な水を、より鮮明に、透明にしたような、透き通る声だった。 「上履き見た感じ1年生、か。んー、見ない顔だったな」 この高校は上履きの色で学年が分かる。 ぼーっと、そう呟きながら起き上がり、裕翔は再び階段を上がり教室に向かった。
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