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それからというもの、裕翔は彼女のことが気になって仕方がなかった。
決して彼女の様相などに一目惚れしたわけではないのだが、彼女の声を聞いた時の衝撃が忘れられないのである。
「んー……」
放課後直前のホームルームが終わっても、彼はぼーっとそればかりを考えて外を見ていた。
すると、
「おいっ」
真上から綺麗な手刀が裕翔にふりかかる。
「いだっ!?」
思わず振り返ると、そこには昔から仲のいい野球部のエース、城島 晴敏(きじま はると)がいた。
身長が高く、運動もできて成績優秀。
裕翔とは正反対な男なのだが、小学生時代から最後に名前に『と』が付く理由で仲良くなってから、『ユウ』『ハル』と呼び合うような、なぜか暇があれば一緒にいる仲だ。
「いってーな、何すんだよハル!?」
「だって、今日、お前ずっとぼーっとしてっからさ。何かあったんかなって思ったからよ」
「だからってチョップはねーだろ。少しは加減しろよ!」
「あまりにアホズラしてたからついな。んで、なんかあったん? 暗い顔をしてるようには見えないがボケーっとしてよ」
「あー、まぁ。なんか、こう、人にここまで感動したのは始めてっつーか」
「感動?」
「あーそう。感動。そーいや今まで本当に生で、人に感動したことなかったなーってな」
「さては説明する気ないなお前。女でも一目惚れしたか?」
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