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4 世界の素
教えてほしい、と言うと彼はもう片方の笑くぼもできるんじゃないかってくらい嬉しそうに笑った。
「こっちにおいで」
彼はいつもの、いつの時代のものだろう机の上にこれまたいつのものだろうという古めかしい木の箱を置いた。
「これは僕の宝物の一つなんだ」
ギッと音をたてて重そうな木の蓋を開ける。
中にはすごく高価なアンティークを支えるような白いベルベット生地の中に、手のひらに程よく馴染むような大きさのビンが3つ入っている。
左から、きいろ、あか、あお。彼は真ん中のあかい液体が入ったビンを手に取る。
「彩香さん、これが世界の素だよ」
途端に私の頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。
「世界の素?」
彼の手の中の赤い液体の入った小ビンを見つめる。
なんの変哲もない。
ただの赤い液体の入った小瓶だ。
「光の話はまた次の機会にしよう、僕らの世界の色はこの三色を元にしているんだ。つまり、この三色があれば大体の世界の色を構成できる」
セツナさんは赤い小ビンを自慢げに振る。
あぁ、よく見れば赤紫色だ。
セツナさんは箱の中に鎮座している黄色の液体が入ったビンも取り出した。
「いま僕は紅葉を作れるよ」
先程から若干置いていかれている私にセツナさんは片えくぼを作って言った。
まぁ見ててよと、彼はそのへんに落ちている紙を取り出した。
繊維が目に見えるほど目が荒く、ちょっとやそっとじゃ破れなさそうなしっかりした厚い紙だ。
なぜそんなものが落ちているのか甚だ不思議だが、それが彼の部屋の特徴なのだ。
彼にかかればそのへんのゴミのように見えるものも、過程の証明に必要な材料になってしまう。
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