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暴れる事がなくなり、掴んでいた髪を離してあげると、彼女は壁伝いに崩れ落ちた。
同時にズルズルと赤黒い液体が壁を濡らして滴る。
私は腰を落として屈み込み、潰れてめちゃくちゃになった彼女の顔を覗いて首を傾げる。
「ねえ、これで臭わなくなったでしょ?もう私は臭くないよね?大丈夫よね?」
不安気に声を掛けて返事を待ったけど、彼女は答えてくれなかった。
「鼻がいいのって可哀想……私ってどんな臭いがしてたのかな……」
聞けば良かったと思いながら立ち上がり、私はそこから立ち去る。
「次は……まだ塾かな……目障りって言ってたもの、見えないようにしてあげなきゃ」
握り締めていた石を投げ捨ててスカートのポケットを探り、中に入れてあるアイスピックを確かめた。
「待っててね、直ぐに私が助けてあげる」
自分の靴音しか響かないアスファルトの上を私は血の付着した顔を腕の服で拭って、車の走り過ぎ去る音のする道へと向かう。
私ハ美シイ。
醜く怯えて過ごす日々から、美しく強い者へと生まれ変わった。
私は願いを叶えて貰った。
私は私を虐げていた彼女達を憐れに思っていた。
私は醜いって……そう思ってる人に助けられても嬉しくないでしょ?
だって、醜いからイジメられていたのだ。
だからこの美しさを見せつけて、助けてあげるの。
─────コレデ許シテアゲル。
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