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「あんた、また変な言葉掛けたんでしょ?」
愉快な声で意地悪くインクの耳元に顔を近付け話掛けるスクに、インクは軽く肩を揺らして笑いを漏らし、
「別に、何も。ほんの少し突っついてやっただけさ」
「あ~、あんたの好みそうなオモチャだわ。もう!あんなお子ちゃま相手にしてないで、ちゃんと働きなさいよね!」
「楽しいだろ?あれぐらいの娘は……暇潰しにはもってこいじゃないか。ちゃんと仕事はしたよ、ほら、可愛いだろ?」
スクの呆れ顔の前にインクは赤茶色い生き物───小さな醜い物体を差し出した。
スクは感嘆の声を漏らしてそれを両手に包み込み、愛しそうに頬ずりをする。
「可愛い赤ちゃん!私も頑張らなきゃ!」
跳ねて喜びを表した後、インクの頬に軽く唇を充ててスクはくるりと身を翻して闇夜に消えた。
「闇に願いを掛けるからさ……ふふふ……私の耳に届くほどのね。だからあのコの深層に渦巻く思いを表に出してやった、それだけ。
後の事はあのコ次第───もう少し堕ちてきたら、また遊んであげよう……今度は快楽を与えてね」
インクは背にする月と同じように口を曲げてニタつくと暗闇に溶けて消えた。
~fin~
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