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「はあ……」
垂れていた頭を上げ、組んでいた手をほどいて空を見上げる。
田舎というほど田畑の多い土地柄ではないが、常に眠らない人々のたむろするような喧騒もない静かで何処にでも在りそうな住宅地の一軒家。
黒一色に白や黄色、青の丸い水滴を散らしたような星々が点在する中を、動くものなど無いのに、動くものが無いのか探して目を向けてしまう。
もはや癖になってしまった。
祈りともとれる行いも、何度も繰り返しては必ず最後に溜め息を漏らす。
いつもののように、硝子窓を閉めベッドに潜り込もうとして掴んだ窓枠の手を、ぬっと伸びてきた長く細い指に包まれる。
「ひっ?!」
居るはずのない場所から突如現れた冷たい手に畏怖して息を飲み目を見開く。
勿論、手は引っ込めた。
「こんばんは~、素晴らしく美しい夜だねぇ」
隣家の部屋灯りも消えた夜中に、二階の壁際にぽっかりとある窓の外、その男は宙に浮き留まり顔を覗かせた。
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