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たじろぎ後退る私の後を追うように、ずいっと窓から足を潜らせ侵入してきた。
艶のある少し長めの黒髪、健康そのものと言った褐色のいい顔色、白にも見える灰色のロングコートに白い清潔なシャツ、グレーのデニムパンツに革靴。
身長は私より10㎝以上は高く、体格は細身。
開かれた目はばっちり二重で、鼻筋が通り、薄い唇の端を僅かに上げてすらりと爽やかさを漂わせて目の前に立つ。
観察してしまうほどに目が離せず、男を食い入るように眺める。
「初めまして~、願いを叶えに参りました」
軽くお辞儀をしつつもふざけた口調なのに、顔を上げ私を見詰め返してくる瞳は真剣なもの。
「な、何っ?!け、警察、呼ぶわよっ?!」
「あはははは~」
怯えて上擦る声で虚勢を張る私に渇いた笑いを漏らす。
人ではない、と直感しているのに目にする姿は人そのもの……はっきりと人の象を持って部屋の中に立つ。
「イヤだな~君が呼んだ癖にぃ」
「わ、私が?!あんたなんか、知らない!」
「あ~違う違う、毎晩『お願い』って情熱的に呼んでたじゃない」
「?!」
「私は君の願いを叶える、君の『お星さま』ですよ」
ガクガクと震える足を必死で立たせている私に音もなく近付き、男は甘美な声で囁き、屈んで凝視する目の中を覗き込んできた。
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