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「なっ?!いっ、いやぁ……あああぁぁっっ!!」
歪められた視線の先で、私は痛みと共に腹の中を動くモノの感触に怯えて叫んだ。
「ひっ!い、いや、いぁぁ……」
吐瀉物の上を痛みに声を荒げて悶絶する私の腹をまさぐっていたモノは出口を求めて腹から胸へ、喉へと移動する。
「あがっ!!」
声を押さえ込まれ、息も出来ない……
涙と同時に垂れ流れていた鼻水のお陰で鼻からの呼吸もままならない。
「?!」
喉元に指を立てて爪痕を付け、口の中へと何かが迫りくる切迫感に抗い全身に力が隠るが、ソレは容赦なく口内を押し広げて外へと這いずり出てきた。
びちゃびちゃと粘着質な体液を纏い、骨に皮を付けただけの赤茶色い物体は、全身で息をする疲弊した私の目の前で小動物のように動き「キィキィ」と音を発する。
「ふぅん……なかなか素晴らしい!」
男は私から吐き出された物体をじっくりと眺め回して感嘆の声を上げ、すらりと真っ直ぐに立ち上がった。
その足元は床にあらず……浮いている。
「はあ……はあ……な、何者なの?」
味わった事もない吐き気と激痛から解放された私は尚も強がって痛む喉を奮わせ、充血する目を吊り上げた。
男は平然として腕を伸ばし、手を差し伸べてくる。
だがそれは床に転がる私へではなく、私の前でねちゃつく液体を振り払う赤茶色の小さな生き物に伸ばされたものだ。
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