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大輔
大輔は、優子の席に移ってきた。
店のBGMのジャズに、大須観音の方から、お経を読み上げる朗々とした声が被ってくる。
大輔は、カフェオレとガトーショコラを注文していた。
「優子さんは、『ONE PIECE』が好きなんですね。それも、すっげえ、コアなファンみたい」
「大輔くんも?」
「優子さんほどじゃないですが、サンジのファンです」
「あ、わかる気がする」
「今日は大須に買い物ですか?」
「いや、小説を書きに来たの。それが趣味の一つ」
「大須を舞台に?」
「直木賞作家が書いた小説がネット上で連載されていて、アナザーストーリーを公募してっから」
「『大須なもなもイレギュラーズ』のこと?」
「あ、知ってるの?」
「こう自己紹介をすれば良かったですね。『大須なもなもイレギュラーズ』の、大輔です」
「は?」
大輔は、ニヤリとして、優子を見た。隣の席のゴールド&シルバーも、黙って二人を見ている。常連客らしい年輩の女性が店に入ってきて、ぜんざいを注文しても、気にとめる様子がない。
優子は、笑い返した。
「そりゃ、また、そうなら、君を主人公に小説を書くしかないでしょうねえ」
「いいですねえ。何でも聞いてください」
「あ、じゃ、さっき出て行ったミニスカの彼女は、どうする気なの?」
「質問するの、そこ?」
「いいじゃん、答えてよ」
「えー、あの子は」
(終わり)
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