第一話  星降る先端都市

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第一話 星降る先端都市   控えめなノックの音が狭い執務室に響いた。  室長をはじめ、部下四人の男性が一斉にドアに視線を走らせる。  本日付けで、新人の女性が転属されると知らされていたからだ。  その時を今か今かと男たちは仕事をするフリをしつつ待ち構えていたのだ。  室長のマジョラムは部下全員の後頭部を一瞥しつつ、ジラすようなタイミングを置き、そして返事した。 「どうぞ」  その声は、自分でも制御を誤ったと知れる、少し高い、しかも粘着性のあるものだった。  だが、それに気づいた者はおらず、みなは固唾を呑んでドアを見続けている。  室長の返事に呼応し、ドアがゆっくりと開く。  ドアノブを掴む手が遠慮がちに現れる。  白く小さな手。    そして、細く伸びやかな腕が。  ドアの下方からは、よく磨かれた黒いヒールが覗き、    続いてほっそりとした脚が一歩。  ひらりと正装のケープがそよぐ。  予想より少し高い位置から、シルバーの髪が現れ……。  ショートヘアか?  少し力強く見える肩……。  正装の上からも推測できるボリューム感のある胸が突き出す。  男たちはゴクリと喉を鳴らす。  そして、   化粧っ気のない、  これといって  特徴のない     
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