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はあ、とペパーはため息をついた。
いきなりの出張。しかもリミットまでさり気なく切られた。
流石は世界調和省、何ごともシビアだ。
「あの、私一人ででしょうか?」
老眼鏡のフレームの上から室長はペパーを見上げた。
「あいにくみんな自分の奉働で手一杯だ」
とわざとらしく狭い部屋を見回す。
…キミが美人なら私が一緒に行ってやってもいいのだが。
ハ?
ウン?
室長の感情波が微かに洩れ届き、ペパーと視線が一瞬絡む。
軽く咳払いし、室長は続けた。
「確か、キミは開発省ではいろいろと実績を残しているとか。また、登用試験でも優秀な成績だったと聞いているが?」
弱々しくペパーは頷くも、なるほどと察しをつけた。
これは私をここに配置した局長への当てこすりなんだ。私の失敗を望んでいる。
そして室長は、「あなたが配属した部下は実は無能でした。他の部下の配属をお願いします」そう言うつもりなのだ。できれば美人の部下を、と言い添えることだろう。
確かに、ドスケベオヤジだ。
再び室長と視線が合う。
何か?
いえ、と言うようにペパーは感情波をわざと洩らしつつ、微笑みを浮かべて見せる。
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