第一話  星降る先端都市

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 何故ステラは警報を出さなかったのか? 予測できなかったのか、それとも怠慢か?  近頃、ステラの動きが不穏だとペリシアなど近隣都市から報告が届いている。  そこで、何が起こっているのかを調査し、アグライアの訴えにステラがどのように対処するのかを見届けること。場合によっては自らが働きかけ、調停を図ること。  これが任務だった。  マニュアルでは提訴した側から訪問する。  しかし、訴えられたステラの状況を見てから対処した方が早いと考え、ペパーは先にステラに向かうことにした。   ※  空港に降り立ち、半日乗ってきたアグニホーバーを見上げた。  機体の上部にはクリスタルのようなアース管が天を突く。  天空に霧より薄く存在するエネルギー帯であるゾンデ界からライデンを受け取る貴重な装置だ。  都市で様々な物を動かすライデンも、同様のシステムで獲得している。 「調停官!」と誰かが遠くで呼ぶ。  しかしペパーは大きな鞄を抱え、うっすらと額に浮かんだ汗を腕で拭い、それに気づかず歩き続ける。  これから地球は氷の時代を脱し、どんどん暖かくなるとステラは予測する。  それが本当ならとても耐えられないわ、とペパーは心の中でぼやく。  初夏でこの暑さ、これ以上暑くなるなんて想像できない。  私は涼しいユネイブが好き。  小さな高山植物を愛でたり、遠くの万年雪をいただく山々を眺めたりするのが好き。 「調停官!」  また、誰かが呼ぶ。
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