いち

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いち

夜に響く鋼線の音。 爛れた重金属が擦れ合い、そして引き離れ、 煌々と弾ける。 静寂をこれでもかと破り捨てたその音に、 僕は心を奪われてしまった。 涙はもう止まらない。 渇いては濡れた頬は、 現実から引き?がされた僕の心を取り戻すべく 冷ややかな夜風と手を組んだ。 あの日、抉り取られたのは何だっけ。 あの日、ぐちゃぐちゃに踏み潰されたのは、 なんだっけ。 きっともう、ぼくに理解できる事はない。 ただひたすらに朽ちるのを待つ、 ブリキのおもちゃの様に ぼくは、きえていくのだ。 だれかが、そばにいること。 それは、つらいこと。 だれもそばにいないこと。 それも、 つらいきがする。 いつかをまとう。 どちらにしてもつらいのだから。 このこころは ぼくのこころは ぼくのもの。
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