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「みのりが百面相してるんだもん。何度も声掛けたのに気付かないから、おもしろくて。」
「あ……考え事してたんだよね。ごめん。」
愛次郎はニコッと笑うと、
「いいよ、ところで掃除中…ってことは小姓の仕事?」
「うん。愛次郎は稽古中じゃないの?」
「それが…沖田さんにやられちゃって、手当てする前に井戸に行こうと思って来たらみのりがいたんだよ。」
「沖田さん、やっぱり強いの?」
みのりがそう尋ねると、愛次郎は先程の稽古を思い出したように身震いする。
「土方副長が鬼なら沖田さんは修羅だよ。稽古の時は本当に怖い。でもやっぱり強いから、憧れだなあ。」
へえ、と相槌をうつと、
「みのりも道場に見に来ればいいのに!ていうか、小姓じゃなくて隊士になったら?今から学んでも遅くないよ。」
「うーん。」
「あれ?忘れてたけど、みのりって原田さんの弟じゃん!武家の出だから、剣術してたんじゃないの?」
みのりは痛い所を付かれたと思った。
土方さんから特別なにかを言われた訳ではないから、どう言い訳したらいいか分からなかった。
「隊士じゃない理由は特にないよ、剣術も多少はしてた。小姓になったのは流れだよ、流れ。」
愛次郎が納得してなさそうにみのりを見つめるが、気付いてない振りをした。
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