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「あのさぁ。」
「ん?」
抱きしめられたままの状態で彼の次の言葉を待つ。本当は周りの視線が痛いけれどいつになく真剣な声のトーンにこれからなにを言うつもりなのか緊張が走る。
「俺、あんたのこと一度も年上だと思ったことねぇから。」
「えっ?なに?どういうこと?」
思いもよらぬ展開に頭がついてかないわ。
「だから、年上とか年下とかどうでも良いってこと。」
「う、うん……。」
まぁ、気を使ってくれてるん…だよね?
「なんだよ。その愛想ねぇ返事。ったく、人の気も知らねぇで。」
「えっ?どういうこと?」
少しだけイラッとした声に慌てて聞き返す。
「だからぁ、俺達なんて所詮、生まれたのたった一週間しか変わんねぇじゃん。考えてみろよ。俺達が生まれて初めてこんな満開の桜を見た頃なんて、お互いふにゃふにゃで、どっちが先輩も後輩もねぇじゃん。」
何だか、例えが極端すぎる気もするけれど、相変わらず私を抱きしめたままで、頭上から降ってくる言葉はとても真剣なものに聞こえた。
「うん。そだね。ふにゃふにゃだよね。二人とも。」
「ああ、ふにゃふにゃだよ。」
この人は今、どんな顔してふにゃふにゃだとかいってるんだろうって思うだけで笑いが込み上げてくる。
案の定、どちらからともなく笑いだし、そして私達は人目も気にせず、抱き合ったままゲラゲラと笑っていた。
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