願いの代償

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 それでも、単に男兄弟と遊んでいるから影響を受けているのだと思っていた。 ――あの日、あれを見るまでは。  娘も中学生になった。  未だに一人称は“僕”のまま。  流石におかしいからやめなさい。と、注意しても、“『私』なんて、ハズくて言えるかよ”と、まるで男の子のような台詞で返される。  ふと、頭を過ぎるのは【性同一性障害】の文字。これは今までも考えないようにしていただけで、常に頭の片隅にはあった。  だが、私の中でそれはドラマやテレビ番組で取り上げられるどこか遠くのものでしかなかった。  いつものように娘が学校に行っている間に部屋の掃除をしていた時、それは見つかった。  枕の下に隠すようにして置いてある青い日記帳。  私はそれを手に取り、暫くの間表紙を見つめていた。ここに娘の胸の内が記されているかもしれない。  だが、果たして読んでもいいものなのだろうか。良心の呵責、好奇心、不安……様々な思いがグルグルと頭の中を巡る。  すると、日記帳の中から1枚の便箋がヒラリと舞い落ちた。  それを手に取ると鼓動が跳ね上がった。  そこには《母さんへ》と、娘の文字で書かれていた。  便箋には、日記を読んで欲しい。と、短い文章。  私は……ゆっくりと日記帳を開いた。     
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