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「ははっ、馬鹿みたい」
乾いた笑いが私の口から零れた。こんな願い事、なんの意味もない。だって、こんなの、叶うはずもないのだ。
部屋に戻り、ベランダへの扉を閉める。部屋の中は冷たい空気が入り込んでいて、キャスターの香りは随分と薄くなっていた。
ベットに戻り、一人分の隙間を空けて壁際に寝転がる。彼が眠っていたはずの場所にそっと手を伸ばすが、そこには当然なんの温かみも残ってはいない。包まるように布団を被り、壁側に顔を向けて目を閉じる。
微かにキャスターの香りが鼻をついたような気がした。
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