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素足の間をすり抜ける風が、少し肌寒い。
高台に建てられているこのアパートは、2階からでも下の住宅街を見下ろせる。
もう夜中だからか、あまり明かりは灯っていなかった。目を凝らすように住宅街をじっと見つめる。彼の家を探してみる。見つけられるわけは無いのだけれど。
週に3回、仕事終わりに私の家を訪ねて来る彼は、玄関を開けるなり貪るように私の唇を味わい、そのまま2人でベットに倒れこむ。今日もそうだった。そうして体を重ね合ったあと、必ず眠る私の隣でタバコを一本吸ってから、静かにこの部屋を出ていくのだ。そうして愛する妻と幼い息子の待つ家に、帰っていく。
夜中に目が覚めるのが嫌いだ。
ううん、本当は、あの時本当に寝てしまうことが出来ないのが嫌なのだ。
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