第2話 朝比奈みつき

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 すると、その女性はゆっくりと脚の角度を反対側の四十五度にもっていき、僕と目を合わせたまま微笑みを作った。  このままではまずい。  僕は「大丈夫ですか?」と、さも今気付いたようなふりをして階段を駆け上がった。 「あっ、大丈夫です」と言いながら、ばらまかれてしまった書類を懸命に拾う彼女。  僕もしゃがみこんで書類をかき集めた。 「あっ、すみません」と謝る彼女のほうからは、甘く優しいそれでいて爽やかな香りが漂ってくる。  覗いていた言い訳もしくは、覗いてはいなかったと否定をしたかったのだが、いいアイデアが浮かばない。  頭の中で、さっき見たスカートの中の映像と、今も近くから漂ってくるいい香りと、込みあげてくる恥ずかしさとがこんがらがって、頭が全く機能しない。
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