第1話 スキニーギニアピッグ

3/6
前へ
/652ページ
次へ
 さて、どうしたものか。  正常ではないモルモットから取ったデータは、比較対象にならないため意味をなさない。  こいつはもう研究には不適格。用無しだ。 「処分だよなぁ、おまえ。まぁでも癌だったらどうせ死んじゃうし。そうじゃなかったとしても研究が終われば殺されちゃうか」  空っぽのゲージに移そうと、モルモットを両手で抱き上げた。 「おいおい、そんな目で見るなよ」  これからの自分の運命をわかるはずはないのだが、スキニーギニアピッグはそのピンク色の瞳でジッと僕を見つめている。 「もー、しかたがないなぁ、じゃあ天寿を全うするまで僕が飼ってやるよ。まぁ人間が実験用に繁殖させた生き物だから、天寿もへったくれもないだろうけど、せっかく生まれてきたんだしな。あぁ、ちょうどいいや、僕の話し相手になってくれよ、毎日一人で同じことをやっているから、独り言が増えちゃったんだよ」
/652ページ

最初のコメントを投稿しよう!

343人が本棚に入れています
本棚に追加