第1話 スキニーギニアピッグ

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 気分転換にと、空いていたゲージを水洗いし、ペットシーツを底に敷き、その上に床材用の牧草を敷き詰めて、腫瘍のできたモルモットを入れてやった。 「おまえ、名前どうする? って、名前は自分で決めるもんじゃないよな。じゃあ僕が考えてやるよ、んー、そうだなぁ……」  本当はこんなことをしている場合じゃないのだが。  昨日、母の検査結果と病状説明を聞きに行くために有給を取ったので、仕事が溜まってしまっている。  もう夜中の一時だ。  でもずっと単純作業を続けてきたせいで、どうしても気分転換したい。  おなかも減った。  そんな心持で、ぼんやりと毛のないモルモットを眺めながら出てきた名前は『おこげ』だった。 「おい、おまえの名前はおこげな、背中が腫瘍のせいか焦げたみたいに黒くなっているから、おこげ。おっ、なかなか語呂がいいな。よーし、おこげ! もう変更は認めないからな」そう呼びかけると、おこげが「フイフイフイ」と声を出した。 「おー、おまえも気に入ったか。じゃあ今日からよろしくな、おこげ。しかしその背中のできもの良性腫瘍だったらいいんだけどなぁ。できれば長生きしてくれよ、おこげ」
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