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「……すまん、これでみんな盛り上がってくれ」
「帰るのか?」
「俺がいても楽しめないだろ?」
打ち上げ代を賄えるだけの金額を遠藤に手渡し、俺は店を出た。
もうすぐ暑くなるそんな夜。
街の人間は、煌びやかなネオンに吸い込まれる様に、消えて行く。
嬉しそうに楽しそうに笑う人々もいて、俺がここに居るのがおかしく見える。
「帰って飲み直そう」
このプロジェクトの間、俺にだって休みは殆ど無かった。
唯一の、たった一日だけの休みは、嫁のブーイングで一日中買い物に付き合わされた。その時に買ったビールがまだあるはず。
電車を乗り継ぎ、辿り着いたマイホーム。皆が憧れる程に頑張って買ってやった。
嫁も誇らしいだろう。
「……は?」
暖かく迎えてくれるはずの家族はいなかった。
いたのは、テーブルの上の手紙だけ。
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