冷蔵庫の男?

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冷蔵庫の男?

 静かにけれど声は低く、相手に余裕を持たせない、今すぐにでも逃げ出すはずの声音で言ったはずが、その男には全く、これっぽちも通用しなかった。  しかも、そんな事もお構い無しに、散らばった冷蔵庫の中身を物色し、見つけたハムを嬉しそうに食べ始めた。 「人の話聞いてんのか!!」  段々苛々して来て、思わず男の腕を掴んだ。拍子に手にしていたハムが床に落ちた。 「あぁ……勿体無い」 「そんな事はどうでも良い! だからお前は」 「どうでも良くないよ、食べ物は大切に、人も大切に」 「は?」  ハムに息を吹きかけた男は、それをあっと言う間に食べきり、さてと、と立ち上がり、俺を見上げた。 「それで? 反省してるの?」 「反省?」 「後悔してないの?」 「後悔?」  俺の疑問にさらに疑問で返す男は、何度も首を傾げてただただじっと俺を見る。  その、輝かしい瞳が俺をいつまでも見つめて来る。  一体何のドッキリだよ。
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