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「大須か…懐かしいなあ。相変わらず猥雑としてて、好きだな、俺は。」
彼は相変わらず猥雑としている通りのなかへ入っていって、彼の実家である「珈琲ボン」の前に立った。
「ただいま。」
と、彼はドアを開けて努めて明るく言った。
「おかえり。」と、彼の父親が迎えた。
彼は2階の自分の部屋に行くと、持ってきたバッグを下ろし、また下に降りて来てソファーに座った。
「お前が店をついでくれるとはねえ。てっきり東京でアスリートの道を続けると思ってたよ。」
「膝をこわしちゃ仕方ないよ。」
そういって健二は自分の左膝をさすった。
「陸上ばっかりやってて、店の仕事全然知らないんだよね。一から教えてもらわないといけないなあ。」
と健二は言った。
「まずはコーヒーの入れかたから覚えてもらおうか。」
と、普段は優しい父親の目がキランと光った。
「…お手柔らかに。」
健二は父親にお願いした。
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