4人が本棚に入れています
本棚に追加
「あなたのフォーム、ちょっと無駄があるんじゃない?」
その女性はそういってハーバートに話しかけた。
「なんだよせな。俺が走るの見てたのかよ。」
少し恥ずかしそうにハーバートは言った。
彼女の名前は伊東せな。地元のアイドルグループ「大須オーガニックドールズ」のリーダーにして、某有名大学の理学部で秀才の名をほしいままにしている、才色兼備の女性である。
「いい?あなたの膝のあげかたには無駄があるの。その走り方ではエネルギーが逃げてしまって、スピードにつながらないんだよ。」
というと、彼女は地面に数式を書きはじめた。
xy=cj+bs-……
「わかった?」
と彼女は言ったが、ハーバートはとんちんかんな顔をしている。
「は?なにそれ。」
「つまりさ、もっとコンパクトに膝を動かしたほうが早く走れるってこと。」
「そっかぁ…わかった。とにかくやってみるよ。」
ハーバートの百メートル先に、せなが立って腕時計を見ながら、
「よーい、スタート!」
と手を振った。
ハーバートはせなのアドバイスを頭に入れながら走り、風のようにせなの前を通り抜けた。これでも県大会の高校生記録保持者である。
「うーん、11秒くらい…かな。これって早いの?」
最初のコメントを投稿しよう!