一人じゃない。

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「あなたのフォーム、ちょっと無駄があるんじゃない?」 その女性はそういってハーバートに話しかけた。 「なんだよせな。俺が走るの見てたのかよ。」 少し恥ずかしそうにハーバートは言った。 彼女の名前は伊東せな。地元のアイドルグループ「大須オーガニックドールズ」のリーダーにして、某有名大学の理学部で秀才の名をほしいままにしている、才色兼備の女性である。 「いい?あなたの膝のあげかたには無駄があるの。その走り方ではエネルギーが逃げてしまって、スピードにつながらないんだよ。」 というと、彼女は地面に数式を書きはじめた。 xy=cj+bs-…… 「わかった?」 と彼女は言ったが、ハーバートはとんちんかんな顔をしている。 「は?なにそれ。」 「つまりさ、もっとコンパクトに膝を動かしたほうが早く走れるってこと。」 「そっかぁ…わかった。とにかくやってみるよ。」 ハーバートの百メートル先に、せなが立って腕時計を見ながら、 「よーい、スタート!」 と手を振った。 ハーバートはせなのアドバイスを頭に入れながら走り、風のようにせなの前を通り抜けた。これでも県大会の高校生記録保持者である。 「うーん、11秒くらい…かな。これって早いの?」
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