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捕まるわけにはいかない。捕まって謀反人として晒されるのは、彼の一族に多大な影響を及ぼす。一族は彼を悼み、そして汚名を晴らすべく、長として命じた我慢を振り払い決起するだろう。
だが駄目だ。七夜の弟は優秀だが体が弱い。今一族をまとめることが出来る彼を、失う可能性が高い反乱を起こさせるわけにはいかないのだ。せめて、後十数年。幼い甥が成人し、一族を統べる長として立つまでは。
鬼神と呼ばれた男は一族の為、家族の為に戦って死ぬことを放棄し、深い深い谷底へと身を投げた。
こうして、大きくて小さな政変は呆気なく幕を閉じ、並ぶ者なしと恐れられた剣豪は、歴史の闇に葬られたのだった。
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