【28歳・空を見上げて】

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葉書をもらってから1カ月の後 みち子さんの家にお邪魔した 隅々まで掃除が行き届いた家だった 見習いたいですと私が言ったら 彼女はとても嬉しそうな顔をした ――庭を見てちょうだい   一番時間をかけたの   わたし庭師になりたいくらい   庭の手入れが好きなのよ それで私は家を取り囲む庭を一周した 庭と言っても表玄関の玉砂利を除けば お世辞にも広いとは言えないものであったが 確かに整っていた けれどもどこをどう手入れしたのか 私にはさっぱりわからなかったので 気の利いたコメントができなかった それから家の目の前にある畑に行った 一番に目に付いたのはすいか畑だった すいかが腐らないように藁が敷いてあった ――あとどれくらいで   食べられるんですか? ――この節がね   五番目まで枯れたら食べごろなの   もう少し時間がかかるわね と彼女はすいかの節から出ている 巻きひげにやさしく触れた その他には赤と黄色のミニトマト ゴーヤやキュウリなどが植えられていた ――れいちゃん   キュウリを収穫してちょうだい ――はい 私は勢い勇んでキュウリに触れようとした けれどもキュウリはとげで覆われていて 掴む場所がほとんどなかった とげは透明で そこから水分が出ていた 太陽の恵みを存分に浴びた 立派なキュウリだった 私は目を閉じた あまりに健全で 私には眩しすぎて
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