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それから夕飯をご馳走になって
駅までの道を二人で歩いた
ちょうど夕焼けが終わって
夜が始まろうとしている時間だった
空には月と煌めく星が確認できた
――うちは田舎だから
星がよく見えるのよ
きれいでしょう
――はい
きれいですね
――れいちゃん、ひとつだけ
この夜空の星たちに
お願い事ができるとしたら
何をお願いする?
――お願い事、ですか
――わたしはね、
もう一度彼に会いたい
なんて言わないわ
それよりもね
わたしが天国に行くまで
彼には独身でいてもらいたいの
わたし、また、忠雄さんの
お嫁さんになりたいわ
おかしいかしら?
ねえ、れいちゃん?と
呼びかけるその声に
私は胸を掴まれるかと思った
みち子さん
あなたは生きている
はつらつと
にこやかに
遠い昔を胸に秘め
今日を歩いている
私はどうだろうか
生きている?
いや
消費している
昨日の続きが今日で
何もしなくとも
今日は明日になる
生きているのではない
過ぎてゆくのだ
3年間が
嘲笑うかのように
駆け足で
今まで避けてきた雪だるまが
雪崩を起こして一気に雨になった
おおつぶの、雨だ
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