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――れいちゃん
泣いているの
――なんでも
ないです
――じゃあ一緒に
お願い事しましょ
この星の降る夜空に
私は顔を上げて夜空を見た
私が欲しいものはなんだろう
克也?
違う
彼が家族を捨てられないことは
とうの昔に知っている
なのに別れを避けてきた
犠牲になるのは自分の未来なのに
いつだって知らんぷりをして
どうか
――どうか
勇気を持てますように
と私は言った
――勇気?
何に対しての?
みち子さんが聞いた
――大好きなものを
手放すことへの勇気です
結局私は克也が好きなのだ
けれどもそれを認めるのは癪で
でも認めなければ前に進めなくて
私は前に、進みたくて
みち子さんは
黙って私の話を聞いてから
ゆっくり口を開いた
――手放す勇気
そうね
ひとつ手放さないと
新しいものは手に入らないわ
と頷いた
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