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みち子さんは38歳でご主人を亡くした
ご主人の名を忠雄(ただお)さんという
葬式でみち子さんは泣いていた
乱れた髪をそのままにして
手を彼の頬にやって
ただおさん、
ただおさん、
と
泣きながら何かを言っていた
私には何を言っているのか
聞こえなかったけれど
幼心にみち子さんの横顔を
しっかりと記憶していた
忠雄さんのお母さんをしめよさんという
しめよさんも泣いていた
忠雄、親より先に逝くなんて
一番の親不孝者だよ
と
そうか親より先に逝くのは
一番の親不幸者なのだと
幼心に妙に納得したものだった
その後みち子さんとしめよさんは
一緒に暮らすことになった
みち子さんと忠雄さんの間に
子供はいなかった
――お姑さんと二人暮らしだなんて
と私の母が言った
――みち子さんだからな
と父が言った
母は少し機嫌が悪くなり
――そうね、みち子さんは
何でもできますものね
と言って無言になった
そうか、みち子さんは
何でもできるんだ
と、思った
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