【18歳・冬はそこまで】

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私が18歳の時 しめよさんが亡くなった 葬式後に形見分けだという事で しめよさんとみち子さんの家にお邪魔した 妹も一緒だった しめよさんの部屋に行き たんすの中を広げさせてもらう 私は未使用のハンカチ二枚と靴下を頂いた 妹は鮮やかな色のバスタオルを選んだ 終わった後で一息ついてお茶を飲みながら みち子さんが口を開いた ――このおうちで   一人きりになっちゃったわ またお邪魔させてもらいます と妹が言った それから仏壇に目をやって もう十年も経つんですね と言った ――そうなの   忠雄さんが亡くなってね   三ヶ月や半年くらいは   まだ彼の匂いが残っているの   でも一年経つと消えちゃって   忠雄さんの衣服を握り締めながら   彼の匂いを探したものだったわ   どれだけ泣いても   涙が出てきてね   同じような境遇だった人に   この思いは一体いつまで   続くのかしらって相談したら   十年は消えないよって言われたけれど   十年経った今なら   その意味がようやく理解できるわ そう話すみち子さんは 私たちに手料理を振舞ってくれた 根菜サラダに煮物や煮豆 芋がらや漬物、けんちん汁 どれも手の込んだ物で優しい味がした きっと おもてなしとは かけた時間に比例するのだ みち子さんとお話ししながら 彼女のことを素敵なひとだと思った 真っ直ぐな生き様がよく表れていた
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