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 …――ここから遙か遠く。  とても遠く。  それでもここもそこもこの広い夜空(※宇宙)で繋がっている。  ベランダで目を輝かせ星を見上げている少年。 「……雅也(まさや)、また星に願い事? いつもなにを願っているのよ?」  母親が微笑み語りかける。  潤んだ瞳の彼。 「僕は将来宇宙飛行士になりたいんだ。あの星まで行きたい。今はまだ宇宙に行く事が難しい時代だけど僕が大人になった頃にはきっと行けると思うんだ」  少年の夢はとても純真無垢で直向き。  キラキラと輝いてるよう。  あの星のように。 「そう。いつか、あなたの夢が叶うといいわね。母さんも応援してるわ」  きらめきを放つ夢の欠片を聞き微笑ましくなる母親。 「うん。ありがとう」  少年は眩しい瞳で母親に微笑み返した。 「でもね。宇宙飛行士になるには今の成績じゃダメよ。もっと勉強を頑張らなくちゃね」 「……分ってるよ。そろそろ宿題をやりなさいって言うんでしょ?」 「アハハ。当たり。勉強の時間よ」  少年は渋々ベランダから自室へと戻っていった。  勉強を頑張る為に。  それから15年という月日が経ち少年は大人になった。男になった。もちろん心の中では艶やかな光を放つ夢はずっと色あせず、夢という原動力は少年を逞しい男へと変えていった。そうして今世紀初の銀河系外有人宇宙飛行へと旅立つ日がきた。  そう、幼い頃からずっと憧れ続けてきた少年の夢が今まさに叶うのだ。  あの星に行く日がきたのだ。  夢は諦めないで努力し続けていれば絶対にいつか叶うんだ。  と笑った。  そして地球へと旅立つ。  このお話は地球(ここ)から遙か遠く。  とても遠く。  …――ピタゴラ星という地球とはほど遠く離れたお星さまでのお話。 【 了 】
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