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「洗い流すって、台、台、」
キョロキョロと見まわし、ダイニングテーブルを見つける。
「よっと、移動するぞ」
成海をそっと持ち上げ、テーブルの上に寝かせた。医療用のビニールを傷口の周りにぴっちりと貼り、肌に流した水が触れないように成海を覆った。
「悠ちゃん、手術無事終わったって?」
成海が心配そうに聞いた。
「ああ、無事に終わって、処理したってさ。それより、お前自分の心配しろよっ」
「大丈夫だよ、命に係わることじゃない」
「お前は・・・・・・、はぁ、まったく」
結城が深いため息をついた。
「ヒロ?」
「どれだけ心配させれば気が済むのよ?」
「ごめん・・・・・・」
「とにかく、毒を綺麗に洗い流さないといけないんだ。相当痛むと思うけど、我慢しろよ?」
結城が苦笑しながら、ペットボトルの水を傷口にかけていく。
「っ・・・・・・」
「流しただけじゃ落ちないから、触るぞ」
「うん、ごめんね面倒かけてっ」
成海が苦しげに笑う。
結城が成海の上にまたがり、成海の腕を自分の足で押さえた。激痛により、暴れて傷が広がらない為だ。
「じゃ、いくよ」
結城が溶け出している傷口に水をかけ、素早くこすり洗い流す。
「くぅっ・・・・・・っ」
成海が苦痛に顔を歪めた。必死に耐え、身動き一つしなかった。
「よし、これでいいだろ。大丈夫か?」
「うんっ、ありがと」
苦しそうに息を乱し、唇が赤く血が滲んでいた。
また、俺の前でも無理しやがって・・・・・・。結城はちっと舌を鳴らした。
「バカっ、こんなときまで無理すんな!」
「え?」
「我慢すんなって、俺にまで気ぃ使うなっ」
「ふふ、ごめん」
テーブルがビショビショに濡れた為、ソファーに成海を寝かせ、大地の到着を待った。
しばらくして、玄関の方からバタバタと音がしてガチャっと扉が開いた。
「ごめん! 待ったっ?」
大地が息を切らせ、入ってきた。
「遅ぇ~よ!」
結城が毒づく。
「ごめんごめんっ、すぐ治療するよっ! ナルちゃん、大丈夫?」
大地が心配そうに聞く。
「うん、平気。ごめんね、忙しく動かせて」
「何言ってんだよ、こんな、ひどいっ・・・・・・ううぅっ」
大地が成海の傷を見て、こらえきれず泣き出した。
「バ、バカっ、泣くな! 先に治療しろっ!」
結城がまくし立てる。
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