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「流れ星に祈るより、月に祈る方がいいと思うよ」 流星群だと目を輝かせて、幼なじみを引っ張り出した。 裏山の展望台にはそこそこ人が集まっており、家族や友達、恋人とともに夜空を見上げていた。 綺麗だね、と隣に立つ幼なじみに問いかけた答えが、これである。 「月は魔力を宿す。彗星ならともかく、ただの流れ星には願いをかなえる力はないよ」 「・・・なんであんたは、そう・・・」 誰も願いをかなえる信憑性を語ってほしいわけではないのだが、こいつはその辺しか興味がないらしい。 「何か叶えたいことでもあるの?」 「あるよ」 間髪入れずに返ってきた言葉に少し驚く。 「何?」 「・・・お前には言わない」 いつも通り、かすかに笑っているような、そうでないような、感情の読み取りにくい表情。 それでも、少しだけ意地悪そうに笑っている気がして、少しだけむっとした。 「なんでよ」 「なんでも」 そのまま家へと戻ろうとする幼なじみを慌てて追いかける。 「ちょっと、月雅!」 「置いてくぞ、星那」 『私、大きくなったら月雅のお嫁さんになる!』 「忘れているだろうが・・・叶えてやるよ」 だって、俺は『月』。 魔力を宿す、力の持ち主なのだから。 .
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