第一章 オカルト部の青春

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上野駅は相変わらず適度な都会だった。貞夫は、ダウンのポケットに両手を突っ込んで、例の恒例の珈琲屋へ向かった。古めかしくて、少し懐かしくなるような珈琲屋の扉を開くと、鈴の音で女性の店員が爽やかな笑顔で近づいてきた。 「いらっしゃいませ。一名様でよろしいですか?」 「いえ、あの、知人と待ち合わせているんですが」 「あ、はい。あちらの席へどうぞ」 店員が手を伸ばして招きながら店内を歩いていくと、窓際の4人テーブルのソファに、徳しまは座っていた。 「ごゆっくりどうぞ」 店員が深く頭を下げると、貞夫は、しまの正面のソファに腰をおろして、ダウンジャケットを脱いだ。 「久しぶりだな」 しまは、俯いていてやっと貞夫の存在に気づいたのか顔を一瞬にして笑顔にさせて上げると、人懐っこい犬のような仕草で、握手を求めてきたので、貞夫も無理に笑顔をつくりながら、握手を交わした。 「おっ、久しぶり!貞夫、全然変わってないな」 「お前こそ。全然変わってなくて驚いた」 前に会った時より頬は痩せていたが、それ以外は変わっておらず凛々しかった面持ちが、余計に大人の色を醸し出している。いい男だった。握手した右腕には、機械式の高級そうな腕時計が嵌められていた。それに、皺一つないカジュアルなワイシャツをさらりと着こなしている。どんな女でも、こんな男に声をかけられたらほいほい着いていくだろう。貞夫は自分のどうでもいいような格好を見て、恥ずかしくなった。しかし、しまは気にもしていない様子で、心底貞夫に会えて嬉しそうに、笑顔のままメニューを開いて見せた。 「何飲む?」 「お前は?先に頼んどけば良かったのに」 「旧友が来てからじっくり考えようと思って」 「相変わらず変な奴。俺は、普通にブレンドコーヒーにしようかな」 「貞夫も相変わらずだな。ここの店に来るといつもそれを頼んでたっけ。それなら、僕はカフェ・アメリカーノにしよう。すいません」 しまは手を上げて店員を呼ぶと、メニューを指さしながら二人分の珈琲を頼んだ。それが終わると、改めて姿勢を崩し、リラックスした様子で両肘をテーブルについて、貞夫を見た。
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