3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんな。いきなり呼び出して」
「本当、びっくりしたよ」
「いや、何だか妙に昔のことが過ぎってさ。お前に会いたくなって」
「唐突だな……。まあ、俺も会いたかったけど」
「今何してるんだ?やっぱり、小説書いてるのか?」
貞夫は質問の答えに唇を結んで、目を泳がせてから「ああ」と言った。しまは、お決まりの笑顔で「凄いじゃないか」と、讃えてくれた。
「凄くないよ。毎日頭の中と、パソコンを覗いてるだけ。お前の方が凄いよ。なんか、いい仕事してんだろう」
「さあ、どうだろうな」
しまは、真っ白な歯を見せた。金を持ってる奴ら、全員歯のCMに出れるだろうな、と貞夫は思った。
「なんで、俺なんかに会いに?」
貞夫は少し卑屈気味に尋ねた。しまは、それに気づいたのか、やや笑顔を引っ込めて言った。
「昨日本屋で見つけた貞夫の小説読んだんだ。それで、急に会って話したくなってね。あれ、最高だよ。〝肉屋に恋を〟だっけ?女が、殺人鬼の肉屋に恋をして、解体されながら、殺人鬼の好きなところを一つずつ言っていくっていうシーンはゾクゾクしたね」
最初のコメントを投稿しよう!