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しまの口から出た言葉に、貞夫は動揺した。映画で衝撃的な告白を受けた役者のように表情はこわばる。
「今、何て?」
反射的に、もう一度確認をする。少しずつ心臓の音が大きくなるのが分かる。しまは両指を組んで肘をつきながら真剣な表情で貞夫を見つめている。
「監禁したんだよ、人を」
貞夫は、乾いていく口内を舌で舐めながら、もう一度聞き直した。
「監禁?本当か?」
「ああ。したんだよ。嘘じゃない」
その時、貞夫の心にはある二文字が浮かんだ。もしもこの話が本当なら、しまを通報するのが人としての常識だ。カップへ伸ばす手に緊張が走る。
「それが本当という証拠はあるのか?」
1ミリの好奇心が血の中を巡っていく。店内にいるはずの周りの客の声も聞こえなかった。すると、しまはソファに折りたたんでいたジャケットの中からスマートフォン取り出し、指で操作をし始める。ここを出るなら今がチャンスに違いない。そうして、警察に電話をするか、あるいは知らん顔を突き通して二度と会わなければいい。
だが、貞夫の体は石のように重くその場を離れられずにいた。しまがスマートフォンの画面を貞夫に向かって見せると、貞夫は目を見開き、一気に呼吸が荒くなった。
「これは、監禁して一週間目の写真だ。だから衰弱しているけど、生きてるよ」
画面の中にいた人物は、サラリーマンだろうか、ポマードで固めてあったように見える髪は乱れ、中肉中背、清潔そうなYシャツとスーツのズボンとは裏腹に、縄で縛られたその身は小さく丸まって薄汚れていた。
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