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貞夫は、咄嗟に叫び上がりそうになったのを喉で抑えた。あまりの悲惨な現実に、さっきまで懐かしかった目の前の旧友が、今は赤の他人に思え、恐怖を覚えた。
「これ、本物か?」
唇が震えているのが分かった。緊張を解そうと、口元をお絞りで拭った。しまは、また笑顔を浮かべて頷くとスマートフォンをジャケットにしまった。
「もちろん。本物だ。じゃなけりゃ、わざわざ見せたりしないだろう」
しまは、当たり前のように話していた。まるで、天気の会話でもするように、その顔は日常的だった。
「それで、どうするんだ。その男を、どうするつもりなんだ」
酔ってもいないのに頭の中がぐるぐると回っていく。言葉も整理されずじまいだ。
「面白い事をしようと思ってな。俺達、昔はよく盛り上がってただろ?」
しまの言葉を聞いて、貞夫は立ち上がった。
「悪いが、俺は関わるのはごめんだね」
傍に置いた上着を取り、店から出ようとした途端、しまはテーブルの上に何かを置いた。貞夫はそれを見下ろす。貞夫のよく知っているものだった。
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