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(第一章)
ある日、運送屋が智子の部屋に何かを持って来た。
引っ越したばかりで足りない家具でもあったのか、とても大きな荷物を引きずる音がした。
俺は土曜日の暇な午後でもあった事も手伝い、昼間から智子の部屋を覗いた。
運ばれて来たのは大きな姿見の様であった。
襖一枚分もあろうかというその姿見を、智子は俺の覗いている隙間がある壁の方へ押してきた。
「バレているのか?!」
一瞬身をすくめた。しかし、押入れに差し込む光は消えない。
恐る恐るそっと覗いてみる。
多少視界は悪くなったが、どうやら鏡はこの隙間ギリギリに置かれた様だった。
俺は安堵し、覗きを続行した。智子が着替えを始めたからだ。
智子はいつもこちらに背を向けて着替えていたが、今日は違かった。
こっちを向いて時間をかけて服を脱いでいる。
どうやら智子は鏡に映る自分を楽しんでいる様だった。
智子の顔が淫らに微笑む。そして全裸になった自分を鏡に映している。
俺から見たら、まるで俺に焦らして見せている様にしか見えなかった。
「やはり気付いているんじゃないのか?」
冷汗がじわりと額に浮かんだ。が、手は休む事はしてくれず勝手に動き続けた。
智子は俺に(鏡にだが)全裸のまま色んなポーズを見せつけた。
「ぐぅう・・・」
息を殺していたのだが、思わず果てて声が漏れてしまった。智子の動きが止まった。
まずい・・俺はすぐさま押入れから飛び出したかったが、動きも息も止めじっとしていた。
急いで出る音で俺だとバレるのが恐かったからだ。
光はまだ差し込んでいる。そおっと又隙間に目をあてる。
智子はこっちを向いたまま服を着始めていた。
どうやら気付かれなかった様だ。俺は安堵して、智子が台所に向かったのを見届け押入れから出た。
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