らくがき帳+

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近頃流行りの(?)リアル怪談話に自分も一つ便乗。 ずっと誰かに話したかったけど、その機会が無かった実体験です。 訳あってリアル怪談イベントには出せず。訳は最後に分かります。 【中学校の階段】 あれは雨が降る冬の日の出来事でした。 当時中学生の私は合唱部に所属し、その日もいつも通りに夕方まで活動をして帰るところでした。 冬の日暮れは早いもので、五時過ぎといえ窓の外はすっかり暗くなっています。 合唱部が練習場所にしていた音楽室が位置するのは、校舎最上階の突き当たり。 既に校舎に私達以外の生徒はおらず、廊下の照明は消されているのが常で、点けられたままの階段の照明が慰めでした。 帰り支度に手間取った私は少し遅れて音楽室を出ました。 すると、少し行った所で先に出たはずの女子達が一塊になって立ち尽くしていたのです。 不思議に思って見ると、少し進んだ所に一本の傘がポツンと落ちていました。 彼女達の視線はその傘に注がれていますが、何かに怯えてそこから先に進めないようでした。 『どうしたの?』 私が聞くと、彼女達は口々に答えました。 『私達が歩いていたら、点いていたトイレの電気がいきなり消えた』 『あの傘はその時に驚いて落としちゃった』 『怖くて取りに行けない』 なるほど、傘はトイレの前に置き去りにされています。 ーーおおかた、何かの拍子にトイレの照明が切れただけだろう。 それ以前に自分は照明が点いている所を見ていないから、本当の話かも分からない。 まあ彼女達の怯えようは演技だとは思えないが。 私はオカルトに否定的な訳ではありませんが、いわゆる霊感というものが一切無い為かそれらの類いをそれほど恐れてはいなかったのです。 ーーこんな所に本当に幽霊が出るなら、既に噂になっているはずだし。 取り憑いたり怪我させたりするような奴なら尚更だし。 ましてや祟り殺された人なんか居たら事件になってるし。 人間は自分にとって都合の悪い可能性を否定する事で、心の平常性を保とうとするものです。 私は内心そんな屁理屈を捏ねながら、何も言わずに傘を拾って持ち主の女生徒に渡しました。 彼女達はジレンマから解放され心底ほっとした様子で、私に礼を言うと足早にその場を後にして行きました。 続く→
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