第二話

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第二話

 沙耶は御堂に花を生けるよう指示され応接間を出ていった。仏花ではなく女性が喜ぶような花を買おうと思い立った偶然に岩瀬は感謝した。  御堂は自分が中断した研究はどうなったか、誰それの研究は成功したのか矢継ぎ早に問いかけてきた。岩瀬は進捗報告のように事務的に答えていく。一通り回答したところで岩瀬は、冷静に努めて、話題を変えた。 「御堂さん、申し上げ難いのですが、沙耶さんのアンドロイド、あれは倫理要綱に反しています」  御堂は途端、明らかに気を害した様子で岩瀬を睨め付けた。 「俺はもう研究員じゃないから、そんなもの守らなくていいんだよ」  そういう問題ではない。 「倫理要綱はあなたのようにアンドロイドを側へ置く方への配慮です。せめてヘッドの形状を変更して下さい」  御堂は声を荒げた。 「どうでもいいだろう! 俺はあれがアンドロイドだってちゃんと解っている。誰にも迷惑かけてない!」  岩瀬もつられて強く反論した。 「存在自体がいけないんです。沙耶さんの死を受け入れた御親族の身になって下さい!」
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