4人が本棚に入れています
本棚に追加
沢山の物資と共に輸送船に押し込まれ前線に向かっている時、船が機雷に触れ沈没。
2人が掴まっているのがやっとの板切れを僕と弟の方へ押しやって、父さん自身は荒波の中に消えた。
身一つで前線に辿り着いた輜重部隊の隊員は、扱った事も無い銃と銃剣を手渡され最前線の塹壕に放り込まれる。
幾度となく繰り返される戦闘の果てに、銃の扱い方を覚え戦場での賢い立ち回り方を覚えた。
増援の部隊と共に、前線に配置されていた部隊は攻勢に転じる。
敵を掃討中弟が撃たれた。
弟を担ぎ野戦病院に向かったけど、野戦病院の中や外は負傷者で溢れている。
傷を見た軍医は首を横に振り、弟は治療される事もなく病院の外に放り出された。
母さんと妹達の名前を呟きながら、弟は短い人生を終える。
輜重部隊の生き残りはそのまま歩兵部隊に組み込まれた。
歩兵部隊は再編成のため後方に戻される。
後方に戻された元輜重部隊の兵士は、軍隊に徴兵されてから初めての休暇を貰った。
そしてそこで僕は故郷が無くなった事を知る。
本当かどうか分からないけど、敵の戦術核ミサイルで村とその周辺が焼け野原になったらしい。
教えてくれたのは近所の小母さん。
小母さんは志願して兵士になり、負傷してこの街の病院に入院していた従兄弟の見舞いに来ていて、村でただ1人難を逃れた。
僕はその夜、夜空に煌々と輝く満月に向けて願いを口にする。
「こんな国滅んでしまえ」と。
最初のコメントを投稿しよう!