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婦人は新品のようによく磨かれたパンプスに足を挿し入れると、狭い店内をクルリと歩いて感触を確かめた。 「この感じ、すごく素敵。やっぱり、源さんに修理をお願いして良かったわ。この靴、主人から誕生日にプレゼントされたお気に入りだったから。」 店主は婦人の足元に屈みながら、姿見の向こう側にある彼女の顔に向かって頷いた。 だが、鏡の向こうの彼女の視線は店主の方には向いていなかった。 店主が婦人の視線の先を追うように肩越しに振り返ると、ローストチキンを手に握り締めた少年が、ガラス張りのショーウィンドウの向こう側にへばり付いていた。 少し茶色掛かった坊主頭。浅黒い肌に大きな目。痩せっぽちで背は低いが均整のとれた身体つきと長い脚は、日本人離れしている。 店主はこめかみに太い青筋の血管を浮き上がらせ立ち上がった。 「くぉら~、クソ坊主!汚ねえ手でガラスを汚すんじゃねー!!」 店主が片腕を振り上げて怒鳴りながら店頭に飛び出していくと、少年は既に十三間先の角を右に折れて見えなくなった。 「フンッ、ワシがもうちっと若けりゃあ・・・。」
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