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翌週、靴屋の店主がたまたま大須でも有名な質屋の前を通り過ぎると、何とあの少年に《売った》はずのスニーカーが店頭に並んでいた。 店主は最初自分の目を疑ったが、手に取って確かめると間違いなさそうだった。 たまたま店番をしていた質屋の奥さんに声を掛けた。 「すいやせん、奥さん。」 「おや、源さんいらっしゃい。」 「あそこに並んでいる赤いスニーカー。誰が売ったか教えちゃくれませんかい。」 「ホントは売主さんの事は話しちゃイケないのだけれど・・、他ならぬ源さんの頼みだから。あの靴、ほらあなたもよくご存じの、ローストチキン屋の息子さんが売っていったらしいのよ。新品のスポーツシューズって珍しいから、うちの若い子もよく憶えていたの。」 「やっぱり・・・そうですか。」 「まさか・・、盗品じゃ・・。」 「いやあ、ちゃんと代金貰ってワシが売ったもんですよ。アレ買い戻したいんですが、エエですか?」 靴屋の主人の様子は平静そのものだったが、質屋のおかみは彼の表情の奥に嵐の前の静けさのようなものを感じ取っていた。 その翌日。少年は、いつものように店を訪ねてきた。 店主は質屋から買い戻した靴を少年の目の前に突き出すと大声で怒鳴りつけた。 「おみゃあには金輪際靴は売らんし、スポーツシューズを履く資格なんぞ無いわい!もう二度とワシの前に姿を見せんでくれや。とっとと失せろ!」 頭をゆでダコのように真っ赤にして怒る靴屋の店主を前にして、少年はいたたまれなくなって逃げるように店の前から掻き消えた。
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