水面の星たちの

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「うわっ。すごい積もってる!」  佐奈美はそう叫びながらバスの外へと飛び出した。足をばたつかせると白い地面に跡がついて感動した。 「こらそこ!早く荷物取りに来てっ」  先生が笑い半分といった様子で注意する。バスに積んであったままの自分のボストンバックのことなんてまるで忘れていた。バツが悪くて俯く。佐奈美は普段は先生に注意されるほどのことなんてしないのだ。  だけど林間学校一日目で夜で山の中の宿で雪が降っているのだから仕方がない。友達と二泊三日も一緒に過ごすなんて初めてだし、佐奈美の小学校のある街に雪なんて降ることはない。  佐奈美はボストンバックを肩にかけてから、前をえっちらおっちら歩く百合子の横に走っていった。百合子は移動の疲れかさっきから口数が少ない。 「ゆりちゃんゆりちゃん。見てよ雪だよ。すごいよ」 「うん見えてるよ見えてる。すごいねー」 「ゆりちゃん疲れた?カバン持とうか?」 「大丈夫だよ。あたしの重いもん」  宿の周りは本当に何もなかった。四方が山に覆われていて、少し離れたところに大きな湖があるだけだ。宿は古くて横に大きくて立派でワクワクした。  百合子がぼんやりとして言う。 「雪は降ってるけどさ、星は見えないよね」 「星?見えるよ、ほらあそこに」 「一個だけじゃん。あたし前に家族で長野いった時沢山星見たの。二百個くらいあったよ。ここも山の中だし見れるかなって思ったけど、天気悪いからダメだね」 「えー。そんな悪くないよ。だって雪だし」 「雪だったら悪いって」  それを聞いて、佐奈美は少しだけ残念に思った。そういえば先生が雪が降ってるから肝試しは中止と言っていた。  佐奈美が元気を無くしたのを見て百合子は慌てた。 「で、でも明日は晴れるかもしれないし」 「あ、そっか。そういえば天気予報で明日は晴れだって言っていた!」  百合子はそれは東京の話だと考えたが、今は言わないことにした。
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